治療家のための「リーガル・ディフェンス」|同意書はただの紙ではない【連載③】

治療家の法律の条文とデジタルシールドに守られながら施術を行う治療家を描いたコンセプトアート。医療法務とリスク管理の重要性を表現。 柔整・鍼灸・ATその他専門的観点の記事
「知らない」では済まされない。法律は、あなたを縛る鎖ではなく、身を守る最強の盾です。

その施術、患者さんと「契約」できていますか?

こんにちは、治療家Zです!

第1回では「ミトコンドリアの発電」、第2回では「迷走神経の制御」と、かなりディープな物理学×臨床の話をしてきました。

「よし、これで明日から高単価メニューでバリバリ施術するぞ!」と意気込んでいる先生。

ちょっと待ってください。

高度な施術をするということは、それだけ「リスク」も高まるということです。

もし、先生の施術で患者さんが「痛みが悪化した」と訴えてきたら?
もし、ホームページの表現が「医療広告ガイドライン」に違反していて、保健所から指導が入ったら?

「良かれと思ってやった」「知らなかった」 残念ながら、プロの世界ではその言い訳は通用しません。

シリーズ第3弾のテーマは、「法務・リスク管理」

行政書士の知識を持つ私が、先生と、先生の大切な院を守るための「リーガル・ディフェンス(法的防衛)」についてお話しします。



医療広告ガイドラインの罠:「治る」と言えないジレンマ

まず、私たちが直面する最大の壁が「広告規制」です。

柔道整復師法やあはき法、そして医療法における広告ガイドラインでは、使える言葉が厳格に制限されています。

NGワードのオンパレード

×「最高の技術」 ×「〜が治ります」 ×「痛みが消える」 ×「No.1の実績」

これらをHPやチラシに書くと、誇大広告や特定性(他より優れているという誤認)の禁止に抵触するリスクがあります。

「物理学」が抜け道になる可能性?

ここで活きてくるのが、これまで学んできた「物理学的・科学的な説明」です。

「腰痛が治ります」と書くとNGですが、事実に基づいた機序を説明することは、患者さんの理解を助けるために重要です。

  • × NG: 「自律神経を治して、睡眠不足を解消します!」
  • ○ OK: 「微弱電流により細胞の膜電位を整え、リラックスできる体の環境を目指します。」

主語を「効果」ではなく「メカニズム(事実)」に置くこと。

これが、コンプライアンスを守りながら専門性をアピールする高等テクニックです。


参考文献:

  • 厚生労働省 (2024). 医療広告ガイドライン.厚生労働省 公式ページ(治療家なら必ず熟読すべき一次情報。何が禁止され、何が許可されているかの最新ルールブック。)

同意書(インフォームド・コンセント)は「最強の盾」

自費診療、特に高周波や鍼などの侵襲性(体への刺激)が高い施術を行う場合、「同意書」を取っていますか?

「口頭で説明したから大丈夫」は大間違いです。

民法上の「説明義務」

治療家と患者さんの間には、準委任契約(または請負契約)が成立しています。

ここには「説明義務」が付随します。

もしトラブルが起きた時、裁判所は「患者がリスクを十分に理解し、納得した上で施術を受けたか?」を重視します。

「予見可能性」を提示する

ここで重要なのが、第1回・第2回の知識です。

ただ「電気を流しますね」と言うのと、 「この施術は深部体温を上昇させるため、一時的にダルさ(好転反応)が出る可能性がありますが、これはミトコンドリアが活性化している証拠です」 と説明して同意を得るのとでは、法的効力が天と地ほど違います。

物理学的なエビデンスに基づいた詳細な説明(インフォームド・コンセント)こそが、予見可能なリスクを共有し、言った言わないのトラブルを防ぐ最強の盾になるのです。

参考文献:

  • 日本医師会 (2024). 「説明と同意(インフォームド・コンセント)」の法的留意点. 日本医師会 医事法関係ページ (医療行為における契約の法的性質と、説明義務の範囲についての解説。柔道整復師等の施術所においても準用される重要な考え方。)

カルテは「証拠書類」である

最後に、カルテ(施術録)の書き方です。

「腰部マッサージ、電気、1500円」

…まさか、これだけで終わっていませんか?

客観的記録(SOAP)の徹底

万が一、開示請求や訴訟になった際、あなたを守ってくれるのは「過去のあなたが書いたカルテ」だけです。

  • S (Subjective): 患者さんの訴え。「昨日より朝の痛みが強い」
  • O (Objective): 客観的所見。「頸部回旋R45°、胸鎖乳突筋のインピーダンス(硬結)著明」
  • A (Assessment): 評価。「迷走神経の絞扼による緊張性頭痛の疑い」
  • P (Plan): 計画。「高周波で深部加温し、$Z$値を低下させる」

このように、物理学的・解剖学的な根拠を残しておくことが、行政書士的観点からも極めて重要です。

「なんとなく揉んだ」のではない、「根拠があって施術した」という証拠(Evidence)を残してください。


まとめ:プロフェッショナルは「知」で武装する

いかがでしたか?

  • 広告規制: 科学的な言葉選びで回避する。
  • 同意書: エビデンスに基づいた説明で、リスクを共有する。
  • カルテ: 自分の正当性を証明する「証拠」として残す。

これらは、面倒な事務作業ではありません。

あなたと、あなたの家族、そしてスタッフを守るための「聖域(サンクチュアリ)」を作る作業です。

技術(攻め)と法務(守り)。

この両輪が揃って初めて、私たちは「経営」という次のステージに進むことができます。

さて、技術も学び、守りも固めました。

でも、これらを全部一人でやるのは…正直、時間が足りなくないですか?

次回、いよいよシリーズ最終回!

【経営・AI戦略編】「個人院の限界をAIで突破する」

私が実際に使っている「Google Gemini」などのAIツールを駆使して、カルテ作成、ブログ執筆、予約管理を自動化し、「治療にだけ集中できる環境」を作る方法を公開します。

お楽しみに!

治療家Zでした。

この記事を書いた人

アラフォーおじさん
開業して十数年
20年の臨床経験を持つ柔道整復師が痛みの解決法をお伝えします。
はじめまして。柔道整復師の治療家Zです。20年間、様々な痛みや身体の不調に悩む患者さんの治療に携わってきました。この経験から、多くの方が適切な知識や治療法を知らないまま苦しんでいることに気づき、このブログを立ち上げました。

このブログでは、長年の臨床経験と最新の医学的知見を組み合わせ、皆様の痛みを解決するための情報をわかりやすくお伝えします。
目標は以下の3点です:
1. 痛みの予防法と対処法を広く伝える
2. 自己管理の重要性を啓蒙する
3.治療技術の継承
皆様の健康的な生活のために、私の知識と経験を最大限に活用していきます。
一緒に、痛みのない健康的な生活を目指しましょう!
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2025年に宅建士の試験に合格しました。
2026年は行政書士と取得するために勉強に励んでいます。
柔整と法務の両方の視点からブログ記事を書ければいいなと思います。
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