脳の誤作動をリセットする技術|「呼吸」と「睡眠」が最強の治療薬【連載④】

睡眠中に脳脊髄液が脳内の老廃物を洗い流している「グリンパティック・システム」のイメージイラスト。 一般的な怪我、痛みに関する記事
寝ている間に、あなたの脳は「大掃除」をしています。睡眠不足は脳内のゴミ屋敷化(痛みの原因)の始まりです。

こんにちは、治療家Zです。

「脳と痛み」シリーズ、第4回です。

ここまで読んでくださった皆様、お疲れ様でした。

「痛みは脳の勘違い」「天気で自律神経が暴走」「ストレスで脳内麻薬が枯渇」……。

なんだか、絶望的な話ばかりしてきましたね。

書いてる本人も気が滅入ってきそうです。

では、その解決策をご紹介します。

「じゃあどうすればいいんだよ!」「結局、高いツボとか売りつけるんだろ!?」

そんな声が聞こえてきそうですが、安心してください。

今回ご紹介する「最強の治療薬」は、なんとタダ(無料)です。

そう、「呼吸」「睡眠」です。

「なんだ、そんなことか」と思いましたね?

でも、この当たり前のことができていないから、あなたの脳は暴走しているのです。

全員がこれを完璧にやっちゃうと、私の治療院が潰れてしまうので、あまり教えたくないんですが

今日は、壊れた火災報知器(脳)を静めるための、プロの技術を伝授します。



息を吐くだけで、脳は落ち着く

まずは「呼吸」です。 あなたは今、呼吸をしていますか?

していなかったらゾンビですね。

冗談はさておき、痛みを感じている人の99%は、「呼吸が浅くて速い」です。

これは、自律神経の「交感神経(アクセル)」が踏みっぱなしになっている証拠です。

これを強制的に「ブレーキ(副交感神経)」に切り替えるスイッチが、実は身体に一箇所だけあります。

それが「横隔膜(おうかくまく)」です。

迷走神経を刺激せよ!

息を深く吐いて横隔膜を動かすと、その裏を通っている「迷走神経(めいそうしんけい)」という神経が刺激されます。

名前に「迷走」とついていますが、別に道に迷っているわけではありません。

私の人生はよく迷走していますが

これは副交感神経の親玉みたいな存在で、ここが刺激されると、脳は強制的に「リラックスモード」に入らざるを得なくなります。

つまり、「ゆっくり息を吐く」ことこそが、脳への鎮静剤なのです。

🔬【根拠となる文献:呼吸と自律神経】

  • 文献: The physiological effects of slow breathing in the healthy human (Breathe)
  • URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5709795/
  • 解説: ゆっくりとした呼吸(特に呼気)が副交感神経活動を高め、心拍数や血圧を下げる生理学的メカニズムが詳述されています。深呼吸は、科学的に証明された「神経のスイッチ」なのです。

腹式呼吸で横隔膜が動き、迷走神経(副交感神経)を刺激してリラックスさせるメカニズムの解説図。
【図解】息をゆっくり吐くと横隔膜が上がり、その裏にある「迷走神経(リラックススイッチ)」が物理的に刺激されます。

睡眠は脳の「洗濯タイム」

次は「睡眠」です。 「寝る子は育つ」と言いますが、大人にとっては「寝る大人は治る」です。

実は数年前、脳科学の世界で大発見がありました。

それが「グリンパティック・システム(Glymphatic system)」です。

脳は寝ている間に縮む!?

私たちが起きている間、脳は活動によって大量の「ゴミ(アミロイドベータなどの老廃物)」を出します。

これが溜まると、脳の機能が低下し、痛みの誤作動も起きやすくなります。

驚くべきことに、私たちが深い睡眠に入ると、脳細胞は少しだけ縮んで隙間を作ります。

その隙間に脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体がザーッと流れ込み、溜まったゴミを洗い流してくれるのです。

つまり、睡眠とはただの休憩ではありません。

脳の「全自動洗濯機」が回っている時間なのです。

睡眠時間が6時間未満の人は、ゴミが脳に残ったまま翌朝を迎えることになります。

そりゃあ、頭も痛くなるし、古傷もうずくわけです。

私も昨日は夜更かししてブログ記事を作成していたので、今猛烈に反省しています。

🔬【根拠となる文献:脳の洗浄システム】

  • 文献: Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain (Science)
  • URL:https://www.science.org/doi/10.1126/science.1241224
  • 解説: 睡眠中に脳内の老廃物除去システム(グリンパティック・システム)が活発化することを突き止めた画期的な論文。睡眠不足がアルツハイマー病などのリスクになるのも、この「洗浄不足」が原因です。

実践!「4-7-8呼吸法」

では、具体的なリセット方法をお教えしましょう。

お金も道具も要りません、怪しい壺も売りません。

米国の著名な医学博士も推奨している「4-7-8呼吸法」です。

これを寝る前にやるだけで、副交感神経が優位になり、泥のような眠りにつけます。

やり方

  1. 吸う(4秒): 鼻から静かに息を吸います。「いち、に、さん、し」
  2. 止める(7秒): 息を止めます。ここで酸素を全身に回します。~~苦しくても頑張って。~~
  3. 吐く(8秒): 口から「フーッ」と音を立てながら、細く長く息を吐き切ります。

これを4セット繰り返してください。

これ、やってみると分かりますが、かなりマヌケな顔になります。

なので、電車の中やデート中にはやらないでください。

でも、効果は絶大です。脳の興奮がスッと冷めていくのが分かるはずです。


まとめ:無料の特効薬を使おう

  1. 呼吸: 息を長く吐くことで、迷走神経(リラックススイッチ)を入れる。
  2. 睡眠: 寝ている間に、脳はゴミを水洗いしている。

「痛み止めが効かない」と嘆く前に、まずは今夜、スマホを置いて早く寝てみませんか?

結局のところ、最高の医師はあなた自身の身体の中にいます。

その名医を働かせるか、過労死させるかは、あなたの生活習慣次第なのです。

さて、いよいよ次回は最終回です。

これまでのお話を総まとめし、「痛み止めが効かない時の『統合医療的』アプローチ」についてお話しします。

これまでの知識をどう組み合わせれば、あなたの長年の痛みが消えるのか? 感動の(?)フィナーレをお見逃しなく!

この記事を書いた人

臨床20年の柔道整復師 × 法律家(学習中)|身体と暮らしを守る専門家

はじめまして、治療家Zと申します。 柔道整復師(国家資格)として開業し、十数年。これまでの20年間で延べ6万人以上(①ヶ月300人程なので、合っていると思います)の患者様の治療に携わってきました。

現場で多くの「痛み」と向き合う中で痛感したのは、「正しい医療知識」と「生活を守る法律知識」の両方がなければ、本当の意味で患者様の不安を取り除くことはできないということです。

そのため、臨床の傍ら法務の学習も進め、2025年には宅地建物取引士試験に合格。現在は2026年の行政書士試験合格を目指し、日々研鑽を積んでいます。

このブログでは、単なる健康情報の発信にとどまらず、解剖学・生理学等に基づいた「確かな医療知識」と、薬機法や関連法規を遵守した「信頼できる情報」を、柔整と法務のダブル視点からお届けします。

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