こんにちは、柔道整復師の治療家Zです。
物理療法機器の深掘り連載、第3回です。
第1回と第2回目の記事はこちら ↓タブで操作してくださいね
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第1回:機器ごとのエネルギー変換の物理学
今回は、近年の治療院業界において「自費診療の柱」として導入が進んでいるラジオ波 治療器(RF:Radio Frequency)を取り上げます。
インディバ、テク・ウィン、ラフォスなど、様々なメーカーからハイスペックな機器が登場していますが、先生方はラジオ波 治療器を「ただ温めるだけの機械」として使っていませんか?
もしそうなら、それは数百万の投資に対してリターンが見合っていません。
ラジオ波 治療器の真価は、温熱(Thermal)だけでなく、細胞レベルの環境を変える「非熱(Athermal)」作用と、「自律神経系」へのアプローチにあります。
今回は、他院との差別化を図り、患者満足度(=単価)を最大化するためのRF運用の真髄を解説します。
なぜ今、ラジオ波 治療器なのか?(経営と臨床の視点)
まず、臨床的なメカニズムに入る前に、なぜこれほどラジオ波 治療器がプロに選ばれているのか、その背景を整理します。
深部加温の「質」が違う
前回解説した超音波が「局所・点」のアプローチであるのに対し、ラジオ波は「広範囲・立体(Volume)」のアプローチです。
電流が体内の抵抗組織を通過する際に発生する「ジュール熱」を利用するため、外部から温めるのとは次元の違う、「身体の内側から湧き出るような熱」を作り出せます。
この圧倒的な体感(心地よさ)は、患者さんのリピート率に直結します。
痛みの治療だけでなく、「冷え性改善」「代謝アップ」「自律神経調整」といった、高単価な予防・美容メニューにも展開できるのが、ラジオ波 治療器の最大の強みです。
CETとRET:ターゲット組織の完全な使い分け
ラジオ波 治療器を使いこなす上で避けて通れないのが、電極(プローブ)の使い分けです。
多くの機種には
- CET(Capacitive Electric Transfer:容量結合型)
- RET(Resistive Electric Transfer:抵抗結合型)という2つのモードが搭載されています。
これを「なんとなく」で使い分けている先生が多すぎます。
物理学的な挙動は明確に異なります。
① CETモード(黒い電極・コーティングあり)
- 構造: 電極表面が絶縁体でコーティングされており、コンデンサ(キャパシタ)のような働きをします。
- 発熱ポイント: 電極に近い「水分を含んだ組織」で主に発熱します。
- ターゲット: 筋肉、血管、皮膚、筋膜など。
- 臨床応用: 筋疲労の除去、浮腫(むくみ)の改善、リフトアップ(美容)。
② RETモード(銀色の電極・ステンレス)
- 構造: 絶縁体がなく、電流がダイレクトに体内へ流れます。
- 発熱ポイント: 電極から遠い、あるいは電流が通過するルート上の「電気抵抗が高い(インピーダンスが高い)組織」で発熱します。
- ターゲット: 腱、靭帯、骨、関節包、内臓脂肪、深層筋。
- 臨床応用: 慢性腰痛(多裂筋)、変形性関節症、内臓冷えの改善、拘縮除去。
プロの選択眼
「腰が痛い」という患者さんに対し、表層の脊柱起立筋が張っているならCET、深層の椎間関節や多裂筋が癒着しているならRET。
このように、病態の深さと組織の質に合わせて電極を持ち替えることこそが、ラジオ波 治療器のプロトコルです。
【根拠となる文献:CETとRETの温度分布】
- 文献: Tashiro Y, et al. Effect of Capacitive and Resistive electric transfer on haemoglobin saturation and tissue temperature. Int J Hyperthermia. 2017.
- URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28664765/
- 解説: CETとRETそれぞれのモードを使用した場合の、組織深達度と温度上昇、ヘモグロビン酸素飽和度の変化を比較した研究。RETが深部組織(2cm以深)の温度を有意に上昇させることが実証されています。
「非熱(Athermal)」が細胞を変える
ラジオ波 治療器の最も専門的な領域、それが「非熱効果」です。
「温めないなら意味がないのでは?」と思われるかもしれませんが、実はここが細胞治療の最前線です。
特定の周波数(特に448kHzなど)の電流を通電すると、熱が発生しない程度の出力(または熱を感じないパルスモード)であっても、細胞レベルでは以下の変化が起きています。
- 細胞膜電位の平衡化: 損傷して乱れた細胞膜のイオンバランスを整える。
- ATP産生の促進: ミトコンドリアを刺激し、エネルギー産生を促す。
- 幹細胞の増殖促進: 組織修復を早める。
急性期でも使える唯一の深部温熱機器
通常、捻挫や肉離れ直後の急性期(炎症期)に温熱は禁忌です。
しかし、ラジオ波 治療器の「非熱モード」であれば、熱を発生させずに「腫脹の軽減」と「組織修復の促進」のみを行うことが可能です。
これにより、受傷直後のアスリートに対して、アイシング(RICE処置)以上の積極的なアプローチが可能になります。
これはAT(アスレティックトレーナー)にとって強力な武器となります。
【根拠となる文献:448kHzの細胞作用】
- 文献: Hernández-Bule ML, et al. In vitro exposure to 0.57 MHz electric currents exerts cytostatic effects in HepG2 human hepatocarcinoma cells. Int J Oncol. 2014.
- URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24626915/
- 解説: 特定のラジオ波周波数が、細胞の増殖や代謝に与える影響を研究した論文。熱作用だけでなく、電気的な刺激そのものが細胞活動にポジティブな影響を与える(または異常細胞を抑制する)可能性が示唆されています。
自律神経へのアプローチ:脊柱通電の極意
一般向け記事で「呼吸と自律神経」の話をしましたが、ラジオ波 治療器を使えば、物理的に自律神経へアプローチできます。
交感神経幹は、脊柱(背骨)の両脇を走行しています。
また、副交感神経の重要な中継点は、仙骨(骨盤)にあります。
副交感神経優位を作る「仙骨RET」
私の臨床経験上、最も効果が高いのが、腹部にアースプレートを敷き、うつ伏せで仙骨エリアにRETモードでじっくり熱を入れる手法です。
仙骨および腹部深層(腸管など)が温まることで、内臓反射により副交感神経が優位になります。
施術中に患者さんが「落ちるように眠ってしまう」のは、まさに自律神経がスイッチした証拠です。
不眠、更年期障害、原因不明の不定愁訴。
これらに対し、徒手療法だけでなくラジオ波 治療器による「自律神経調整メニュー」を提案できることは、治療院としての大きな差別化要因になります。
【法務的視点】火傷リスクとインフォームド・コンセント
最後に、行政書士を目指す視点からのリスク管理です。
ラジオ波 治療器は、超音波以上に「火傷(熱傷)」のリスクが高い機器です。
スパーク事故と電極密着
ラジオ波は、電極と皮膚が少しでも離れると「スパーク(放電)」し、鋭い痛みと共に火傷を引き起こします。
特に骨の突起部(棘突起や肩峰)の操作は要注意です。
- クリーム・ジェルの管理: 通電剤が乾いてくるとスパークしやすくなります。コストを惜しまずたっぷりと使用してください。
- アース不良: 対極板(アース)が浮いていると、接触部で火傷が起きます。
- 感覚確認: 「熱いくらいが効く」は間違いです。深部加温は「ポカポカする」程度でも十分効果があります。
万が一事故が起きた際、問診票で「感覚障害の有無」を確認していたか、リスク説明をしていたかが争点になります。
高機能な機器ほど、運用者のリテラシーが問われることを忘れないでください。
まとめ:高単価メニューに足る価値がある
ラジオ波 治療器は、単なる温め機ではありません。
- CET/RETの使い分けによる、組織特異的なアプローチ。
- 非熱モードによる、急性期からの細胞修復。
- 自律神経レベルでの体質改善。
これらを理論的に説明し、実践できれば、それは「10分1000円」のオプションではありません。 「体質改善プログラム」として、数千円〜数万円の価値を提供できるサービスになります。
次回、連載第4回は「マイクロ波(MW)は過去の遺物か?」です。
古い接骨院の隅で埃を被っているマイクロ波。実は「ある条件」においては、最新機器をも凌駕する即効性を持っています。
法的リスク管理も含め、古豪の再評価を行います。
お楽しみに。





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