「検査は異常なし」でも痛いのはなぜ?|長引く痛みの正体は「脳の勘違い」だった【連載①】

検査結果は正常(グリーン)だが、脳内では痛みの信号(レッド)が誤作動を起こしている様子を描いた医療イラスト。 一般的な怪我、痛みに関する記事
身体に傷はないのに痛い。その正体は、脳の「火災報知器」の誤作動かもしれません。

こんにちは、治療家Zです。

今日から新しい連載を始めます。

テーマはズバリ「痛みと脳」の関係です。

治療院の現場にいると、患者さんからこのような相談を非常によく受けます。

「先生、病院でレントゲンやMRIを撮ってもらったんですが、『骨にも神経にも異常はない』と言われたんです。でも、やっぱりここが痛いんですよ…。」

ご本人は間違いなく痛みを感じているのに、画像診断では原因が見つからない。

「気のせい」「ストレスでしょう」で片付けられてしまい、途方に暮れている方が大勢いらっしゃいます。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

実は、最新の痛みの科学では、「慢性的な痛みの多くは、患部ではなく『脳』で作られている」ということが常識になりつつあります。

第1回は、あなたが感じている痛みの「本当の正体」について、少しアカデミックな視点から紐解いていきましょう。


そもそも「痛み」とは何か?(正常なシステム)

私たちは普段、「怪我をした場所が痛い」と感じています。

例えば、足の小指をタンスの角にぶつけたとします。

  1. センサーが反応: 足の小指にある「侵害受容器(痛みセンサー)」が衝撃を感知します。
  2. 電気信号が走る: その情報が電気信号となり、神経という電線を通って脊髄へ伝わります。
  3. 脳が認識する: 脊髄から脳へ信号が届き、脳が「痛い!危険だ!」と判断します。

つまり、痛みとは身体を守るための「高性能な火災報知器」のようなものです。

異常を知らせてくれる、なくてはならない防御システムです。

ここまでは、皆さんもイメージしやすいと思います。


【痛みの伝達経路の図】

痛みが患部から神経、脊髄を通って脳に伝わるまでの仕組みを示した図解イラスト。
【図解】痛みは「患部」で起きているのではなく、患部からの信号を「脳」が受け取った結果の感覚です。

報知器が壊れるとき(慢性痛のメカニズム)

問題はここからです。

怪我が治れば、通常は火災報知器も鳴り止みます。

しかし、強い痛みが長期間続いたり、強いストレスがかかったりすると、このシステムに「バグ」が生じることがあります。

これを専門用語で「中枢性(ちゅうすうせい)感作と呼びます。

簡単に言うと、「脳の火災報知器が壊れて、誤作動を起こしている状態」です。

脳が痛みを「学習」してしまう

痛い状態が長く続くと、脳はそれを「重要な情報」だと勘違いし、痛みの神経回路を強化してしまいます。

まるで、一度覚えた自転車の乗り方を忘れないように、脳が「痛みの感じ方」を学習(記憶)してしまうのです。

こうなると、もう患部に傷があるかどうかは関係ありません。

  • 火事が起きていないのに、警報が鳴り響く。
  • そよ風が吹いただけで(本来は痛くない刺激で)、「痛い!」と感じてしまう。

これが、「検査では異常なし」と言われる慢性痛の正体の一つです。

患部は治っているのに、脳のシステムだけが「痛いモード」のまま暴走しているのです。


【ここに画像を挿入:正常な脳と、痛みに過敏になった脳の比較】

正常な脳と、慢性痛によって中枢性感作(過敏化)を起こした脳の比較イラスト。右側の脳は広範囲で痛みの反応が暴走している。
【比較】右図のように、慢性痛の状態では脳が痛みを学習し、小さな刺激でも脳全体が過剰に反応するようになります。

なぜ「整体だけ」では治らないのか?

ここまで読めば、長年悩んでいる慢性的な肩こりや腰痛が、なぜ普通の整体や電気治療だけでは改善しないのか、お分かりいただけるでしょう。

一般的な施術は、あくまで「患部(筋肉や関節)」へのアプローチだからです。

もちろん、筋肉の緊張を緩めることは大切ですが、それだけでは「脳の誤作動」まではリセットできません。

火事が誤報なのに、一生懸命に火を消すフリをしているようなものです。

本当に必要なのは、壊れて鳴り響いている「警報装置(脳のシステム)」を修理することなのです。

まとめ:次の視点へ

「痛みは脳が作り出している幻影である」。

少し極端に聞こえるかもしれませんが、この視点を持つことが、長引く不調を断ち切る第一歩です。

では、具体的に何が脳のシステムを狂わせるのでしょうか?

その大きな要因の一つが、実は「天気(気圧)自律神経」です。

「雨が降ると古傷が痛む」 これは気のせいではなく、科学的な根拠があります。

次回、第2回は「『雨の日に古傷が痛む』の科学|気圧センサーと自律神経の暴走」について解説します。

あなたの耳の中にある「小さなセンサー」の話です。お楽しみに。

この記事を書いた人

臨床20年の柔道整復師 × 法律家(学習中)|身体と暮らしを守る専門家

はじめまして、治療家Zと申します。 柔道整復師(国家資格)として開業し、十数年。これまでの20年間で延べ6万人以上(①ヶ月300人程なので、合っていると思います)の患者様の治療に携わってきました。

現場で多くの「痛み」と向き合う中で痛感したのは、「正しい医療知識」と「生活を守る法律知識」の両方がなければ、本当の意味で患者様の不安を取り除くことはできないということです。

そのため、臨床の傍ら法務の学習も進め、2025年には宅地建物取引士試験に合格。現在は2026年の行政書士試験合格を目指し、日々研鑽を積んでいます。

このブログでは、単なる健康情報の発信にとどまらず、解剖学・生理学等に基づいた「確かな医療知識」と、薬機法や関連法規を遵守した「信頼できる情報」を、柔整と法務のダブル視点からお届けします。

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