こんにちは、治療家Zです。
今日から新しい連載を始めます。
テーマはズバリ「痛みと脳」の関係です。
治療院の現場にいると、患者さんからこのような相談を非常によく受けます。
「先生、病院でレントゲンやMRIを撮ってもらったんですが、『骨にも神経にも異常はない』と言われたんです。でも、やっぱりここが痛いんですよ…。」
ご本人は間違いなく痛みを感じているのに、画像診断では原因が見つからない。
「気のせい」「ストレスでしょう」で片付けられてしまい、途方に暮れている方が大勢いらっしゃいます。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
実は、最新の痛みの科学では、「慢性的な痛みの多くは、患部ではなく『脳』で作られている」ということが常識になりつつあります。
第1回は、あなたが感じている痛みの「本当の正体」について、少しアカデミックな視点から紐解いていきましょう。
そもそも「痛み」とは何か?(正常なシステム)
私たちは普段、「怪我をした場所が痛い」と感じています。
例えば、足の小指をタンスの角にぶつけたとします。
- センサーが反応: 足の小指にある「侵害受容器(痛みセンサー)」が衝撃を感知します。
- 電気信号が走る: その情報が電気信号となり、神経という電線を通って脊髄へ伝わります。
- 脳が認識する: 脊髄から脳へ信号が届き、脳が「痛い!危険だ!」と判断します。
つまり、痛みとは身体を守るための「高性能な火災報知器」のようなものです。
異常を知らせてくれる、なくてはならない防御システムです。
ここまでは、皆さんもイメージしやすいと思います。
【痛みの伝達経路の図】

報知器が壊れるとき(慢性痛のメカニズム)
問題はここからです。
怪我が治れば、通常は火災報知器も鳴り止みます。
しかし、強い痛みが長期間続いたり、強いストレスがかかったりすると、このシステムに「バグ」が生じることがあります。
これを専門用語で「中枢性(ちゅうすうせい)感作」と呼びます。
簡単に言うと、「脳の火災報知器が壊れて、誤作動を起こしている状態」です。
脳が痛みを「学習」してしまう
痛い状態が長く続くと、脳はそれを「重要な情報」だと勘違いし、痛みの神経回路を強化してしまいます。
まるで、一度覚えた自転車の乗り方を忘れないように、脳が「痛みの感じ方」を学習(記憶)してしまうのです。
こうなると、もう患部に傷があるかどうかは関係ありません。
- 火事が起きていないのに、警報が鳴り響く。
- そよ風が吹いただけで(本来は痛くない刺激で)、「痛い!」と感じてしまう。
これが、「検査では異常なし」と言われる慢性痛の正体の一つです。
患部は治っているのに、脳のシステムだけが「痛いモード」のまま暴走しているのです。
【ここに画像を挿入:正常な脳と、痛みに過敏になった脳の比較】

なぜ「整体だけ」では治らないのか?
ここまで読めば、長年悩んでいる慢性的な肩こりや腰痛が、なぜ普通の整体や電気治療だけでは改善しないのか、お分かりいただけるでしょう。
一般的な施術は、あくまで「患部(筋肉や関節)」へのアプローチだからです。
もちろん、筋肉の緊張を緩めることは大切ですが、それだけでは「脳の誤作動」まではリセットできません。
火事が誤報なのに、一生懸命に火を消すフリをしているようなものです。
本当に必要なのは、壊れて鳴り響いている「警報装置(脳のシステム)」を修理することなのです。
まとめ:次の視点へ
「痛みは脳が作り出している幻影である」。
少し極端に聞こえるかもしれませんが、この視点を持つことが、長引く不調を断ち切る第一歩です。
では、具体的に何が脳のシステムを狂わせるのでしょうか?
その大きな要因の一つが、実は「天気(気圧)」と「自律神経」です。
「雨が降ると古傷が痛む」 これは気のせいではなく、科学的な根拠があります。
次回、第2回は「『雨の日に古傷が痛む』の科学|気圧センサーと自律神経の暴走」について解説します。
あなたの耳の中にある「小さなセンサー」の話です。お楽しみに。



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