こんにちは、治療家Zです。 全4回の分子栄養学連載、いよいよ最終回です。
- 第1〜3回: 身体の「材料(タンパク質・鉄)」、「吸収(腸)」、「代謝(ミトコンドリア)」を整える理論を学びました。

今回は、これらの理論を実際の現場でどう活かすか。
多くの先生が苦手意識を持つ「物販(サプリメント指導)」について、経営と法律の観点から解説します。
「患者さんに物を売りつけるようで気が引ける…」 その気持ち、よく分かります。
しかし、その遠慮が患者さんの回復を遅らせているとしたらどうでしょうか?
今回は、「売り込み(セールス)」ではなく、専門家としての「提案(プロポーザル)」に変えるための技術と、絶対に踏んではいけない「薬機法のリスク」についてお話しします。
「ドラッグストアのサプリ」と「医療用」の決定的な違い
患者さんから「先生、亜鉛ならコンビニで買ってます!」と言われた時。
プロとして、その違いを明確に説明できますか?
これが言えなければ、専門性は担保できません。
① 原材料のグレード(天然 vs 合成)
- 市販品: コストを下げるため「合成原料」や「石油由来」のビタミンが使われることが多いです。吸収率が低く、体に負担をかける場合もあります。
- 医療用(ドクターズ): 酵母や植物から抽出した「天然由来」が基本。生体利用率が高く、身体に馴染みやすいのが特徴です。
② 添加物の量
- 市販品: 錠剤を固めるための「賦形剤(ふけいざい)」や着色料が半分以上を占めることも。「サプリを飲んで肝臓が疲れる」という本末転倒が起きかねません。
- 医療用: 有効成分の含有量を極限まで高め、不要な添加物を排除しています。
③ GMP認定工場(安全性)
これが最強の信頼の証です。 GMP(Good Manufacturing Practice)とは、医薬品と同レベルの製造管理基準のこと。
「成分表示通りに入っているか」「異物混入はないか」が厳格に管理されています。
人の健康を預かる治療家が選ぶなら、「GMP認定工場製造」は最低条件です。
「処方」ではなく「提案」である意識
ここで言葉の定義をはっきりさせましょう。
私たち治療家は医師ではないため、薬のように「処方」することはできません。
私たちが行うのは、「栄養のプロとしての提案(プロポーザル)」です。
成功する導入フロー
- 検査・問診: 爪の状態、肌質、血液データ(お持ちの場合)から「不足」を特定する。
- 教育: 「なぜ今の症状にマグネシウムが必要なのか」をメカニズムで説明する(第3回の知識)。
- 提案: 「市販でも良いですが、効率よく結果を出すなら、不純物のないこちらが『最適解』だと私は考えます」と選択肢を提示する。
ここで「買わないと治りませんよ」と脅すのは三流です。
「私があなたの家族なら、迷わずこれを選びます」という推奨(Recommendation)があれば、患者さんは自ら「先生、それを試してみたいです」と言ってくれます。
【最重要】「薬機法」という地雷を踏むな
院内で販売する際、最も気をつけなければならないのが「薬機法(旧薬事法)」です。
サプリメントはあくまで「食品」です。
たとえ事実であっても、以下のような表現を使うと違法になり、逮捕や業務停止のリスクがあります。
× NG表現(違法:効果効能を謳う)
- 「このサプリで腰痛が治ります」(疾患の治療・予防)
- 「血液をサラサラにします」(身体機能の増強・変化)
- 「免疫力を高めます」(抽象的だがNG)
- 「ガンが消えたという体験談があります」(体験談でもNG)
○ OK表現(合法:事実の提示・栄養補給)
- 「健康維持に欠かせない栄養素です」
- 「毎日のコンディションを整えます」
- 「不足しがちな鉄分を効率よく補給できます」
- 「タンパク質は、身体を作る材料になります」(栄養機能表示の範囲内であればOK)
私達の提供する信頼性とは、法律を守ることです。
院内のPOPやHPで、勢い余って「治る」と書いていませんか?
今すぐ見直してください。
自社ブランド(OEM)という選択肢
ある程度、販売数が増えてきたら、メーカーの既製品を仕入れるだけでなく、OEM(受託製造)で自院オリジナルのサプリを作る道も見えてきます。
- メリット: 利益率が大幅に上がる。他院との差別化(ブランディング)。「〇〇院監修」という信頼性。
- リスク: 在庫を抱える。
最初は「小ロット(100個〜)」で対応してくれるOEMメーカーを探し、まずは「院のロゴ入りプロテイン」などから始めるのが、リスクを抑えた賢い経営戦略です。
まとめ:治療家よ、経営と健康の両方を守れ
- 品質重視: 市販品とは違う「GMP基準」「高濃度」の医療用グレードを選ぶ。
- スタンス: 押し売りではなく、検査に基づいた「栄養の提案(最適解の提示)」を行う。
- コンプライアンス: 薬機法を絶対遵守する。それが患者さんと自分の身を守る。
全4回の連載、いかがでしたでしょうか。
構造(骨格)、制御(神経)、材料(栄養)、そして継続(経営)。
これらを統合した時、あなたの治療院は単なる「整体屋さん」から、「患者さんの生涯の健康を守るパートナー」へと進化します。
「治らない」と嘆く前に、まだアプローチできることはあります。
さあ、新しい臨床の扉を開きましょう。
参考文献リスト
🔬 法令遵守と品質基準(References)
本記事は、以下の基準・法令に基づき執筆されています。
1. GMP認定(適正製造規範)について 厚生労働省のガイドラインに基づき、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにするための製造工程管理基準。
- 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会 (JIHFS):GMP認定工場とは
2. 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律) サプリメント(健康食品)は医薬品ではないため、病気の治療・予防効果を謳うことは法律で禁止されています。本記事は、栄養補給の重要性を啓発するものであり、特定商品の効能を保証するものではありません。
- 厚生労働省:医薬品的な効能効果について
- 消費者庁:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について


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