ザルになった腸を塞げ|「リーキーガット」と脳内炎症の怖い関係【連載②】

腸のバリア機能が壊れ(リーキーガット)、漏れ出した毒素が血管を通じて脳に到達し、脳内炎症(ブレインフォグ)を引き起こしている様子を描いた医学的イラスト。 治療について
あなたの腸は「ザル」になっていませんか? 腸の穴から漏れた毒素が、あなたの脳を燃やしているかもしれません。

「You are what you eat」は嘘である

こんにちは、治療家Zです。

よく「あなたの体は、食べたものでできている(You are what you eat)」と言われますよね。

分子栄養学の視点から言わせてもらうと、これは不正確です。

正しくは、こうです。

「あなたの体は、吸収されたものでできている(You are what you absorb)」

前回、鉄やタンパク質などの「材料」を入れようという話をしました。

しかし、もしあなたの腸が、目の細かい「フィルター」ではなく、穴だらけの「ザル」だったとしたら?

高級なサプリメントも、こだわりのオーガニック食材も、すべて素通りして排泄されるか、最悪の場合、「毒」として全身を巡ります

連載第2回のテーマは、現代人の隠れた国民病「リーキーガット症候群(腸管壁浸漏)」。

なぜ、「パンと牛乳」があなたの脳を炎症させ、治らない痛みを作り出しているのか? その衝撃のメカニズムに迫ります。



腸のバリア崩壊:セキュリティゲートが開けっ放し

私たちの腸(小腸)の壁は、栄養素という「VIP客」だけを通して、細菌や毒素という「テロリスト」は通さない、非常に厳重なセキュリティゲートになっています。

このゲートを閉じているのが「タイトジャンクション」という結合組織です。

謎のタンパク質「ゾヌリン」

しかし、ある特定の刺激が加わると、「ゾヌリン」という物質が分泌され、このタイトジャンクションを「パッカーン!」と無理やりこじ開けてしまいます

これがリーキーガット(漏れる腸)です。

ゲートが開くとどうなるか? 本来通ってはいけない「未消化のタンパク質」「細菌の死骸(LPS)」「重金属」などが、ドバドバと血管内に侵入します。

セキュリティ崩壊。非常事態宣言の発令です。


真犯人は「朝のパンと牛乳」かもしれない

では、何が「ゾヌリン」を分泌させ、ゲートをこじ開けるのか? 二大巨頭がこれです。

  1. グルテン(小麦): パン、パスタ、ラーメン、うどん
  2. カゼイン(乳製品): 牛乳、チーズ、ヨーグルト

「えっ、朝食の定番じゃん!」と思いましたか? そう、それが問題なのです。

小麦の進化と人間の限界

現代の小麦は、品種改良によってグルテン量が劇的に増えています。

私たちの消化酵素は、この強力なグルテンを分解しきれません。

未消化のグルテン(グリアジン)は、腸壁を刺激し、ゾヌリンを大量に放出させます。

カゼインの罠

カゼインも同様に腸を荒らしますが、さらに厄介なのが**「カゾモルフィン」**という物質に変化することです。

名前の通り「モルヒネ」に似た構造を持ち、脳に快感を与えます。

「パンとチーズがやめられない!」というのは、意思が弱いからではなく、脳が中毒(依存)を起こしているからです。


腸が燃えると、脳も燃える(腸脳相関)

「お腹が張るくらいなら我慢します」 いいえ、問題はお腹だけでは終わりません。

血管に漏れ出した毒素(異物)に対し、免疫システムが攻撃を開始します。

これが「慢性炎症」です。

炎症物質(サイトカイン)は血流に乗って全身を巡り、最終的に「脳」に到達します。

脳内炎症=ブレインフォグ

脳の中で炎症が起きると、以下の症状が出現します。

  • ブレインフォグ: 頭に霧がかかったようにぼーっとする、集中できない。
  • 抑うつ・不安感: セロトニン(9割が腸で作られる)が枯渇する。
  • 痛覚過敏: 脳が興奮状態になり、痛みをより強く感じるようになる。

治療家として見過ごせないのは3つ目です。

「どこを触っても痛がる」「いくら緩めても緊張が取れない」 こういう患者さんは、筋肉が悪いのではなく、リーキーガットによって脳が「火事」になっている可能性が高いのです。


対策:2週間の「除去テスト」で白黒つける

では、どうすればいいのか?

いきなり高額な検査(遅延型アレルギー検査など)を受けるのも手ですが、もっと簡単で確実な方法があります。

「2週間だけ、小麦と乳製品を完全にやめてみる」

これだけです。

もし、グルテンやカゼインが原因であれば、2週間で劇的に体が軽くなります。

「朝起きるのが楽になった」「頭のモヤモヤが消えた」「長年の背中の痛みが消えた」…そんな奇跡のような報告が後を絶ちません。

腸を修復する「糊(のり)」を入れる

除去(マイナス)と同時に、傷ついた腸壁を修復する(プラス)アプローチも有効です。

  • ボーンブロス(骨スープ): 天然のアミノ酸が腸粘膜の材料になる。
  • グルタミン: 小腸のエネルギー源となるアミノ酸。
  • プロバイオティクス(整腸剤): 善玉菌の援軍を送る。

まとめ:食事指導は「治療」である

  1. リーキーガット: 腸のバリアが壊れ、毒素が漏れ出している状態。
  2. 原因: グルテン(小麦)とカゼイン(乳製品)が主な引き金。
  3. 結果: 腸の炎症が脳に飛び火し、慢性痛やブレインフォグを引き起こす。

「パンをやめてください」と言うのは、患者さんにとって辛いことです。

しかし、「その痛みの原因は、毎朝のパンが腸に穴を開けているからかもしれません」と、メカニズム(理由)を説明できれば、患者さんは動いてくれます。

さて、材料(第1回)を入れ、穴(第2回)を塞ぎました。

これで栄養は細胞に届きます。

しかし、届いた栄養をエネルギー(ATP)に変えるためには、細胞内の「エンジン」が回っていなければなりません。

もし、そのエンジンが「砂糖漬け」で焦げ付いていたら?

次回、第3回は【代謝回路編】「ミトコンドリアを餓死させるな|糖化とビタミンB群の真実」をお届けします。

アンチエイジングの核心に迫ります。

お楽しみに!

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